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これまでも地球環境保全に継続的に取り組んできたリンテック。新たな一手として開発したのは、植物由来の原料を表面基材と粘着剤に使用し、バイオマスマークを取得したラベル素材でした。美しい地球を未来に託すためのチャレンジは、まだ始まったばかり。
技術・開発室
高山 久幸
粘着材料研究室
河村 明
粘着材料研究室
米山 美紀
※掲載内容は取材時点のものになります
河村
地球規模での環境負荷の増大が世界中で問題視されるなか、日本では2019年に3R+ Renewableを基本原則とした「プラスチック資源循環戦略」が策定されました。これにともない、プラスチックを使用する企業はさまざまな取り組みを進めるように。ラベル素材は石油資源を使用するものが多いですから、リンテックとしても大きな変化が求められていました。
米山
当社ではかれこれ25年以上も前から、環境に配慮した製品の開発・上市を積極的に進めていたと聞いています。たとえば使用後にラベルをきれいに剥がすことで、貼られていた被着体をリユース、リサイクルできる再剥離タイプのラベル素材や、そもそもラベルを剥がすことなく貼ったままリサイクルが可能な「カイナスシリーズ」など、環境配慮をうたった高付加価値製品を開発・販売してきました。
「プラスチック資源循環戦略」が策定される前から、当社は持続可能な社会に向けて積極的に取り組んできたという自負はありますね。
高山
そういう意味では今回の「バイオマス素材」への置き換えは、とても自然な流れ。社会的責任を果たすべく、ラベル業界で真っ先に「バイオマス素材をラベルに活用します」と手を挙げられたのは、環境に対するアプローチを長年積み重ねてきたからだと思っています。
高山
今ある製品の材料を、石油由来のものから植物由来であるバイオマス素材に置き換えることがこのチームのミッション。新たに尖った性能を生み出すわけではありませんし、「置き換えるだけだから簡単だろう」と思われるかもしれませんが、実は非常に難しいことなんです。
河村
バイオマス粘着剤で言うと、いくつか候補となった構成材料の中から、どんな材料をどれくらいの比率で配合すれば、ラベル本来の機能性を失わずにバイオマス素材を使えるのか。これを一つひとつ確かめていく必要があり、これがかなり骨の折れる作業でした。
米山
入れると粘着力が上がる原料があれば、下がる原料もありますし、また配合によっては被着体からの剥がしやすさも変わってきます。河村さんが特性を考えながら設計いただいた構成を地道に評価していくのは、確かに大変でしたね。
河村
自然由来の成分って、こちらの理想通りになかなか働いてくれないんです。提供できる価値を持たせられるよう、いかに成分を転換できるかが腕の見せ所でした。ただ設計はデータの厚みがすべて。試験結果が無ければ何もできないので、毎日、米山さんの報告を今か今かと待っていました。
米山
確かに、考えていた通りの結果にならないことがよくありました。「粘着力は想定通りだったけど、ラベルが白っぽくなりました!」と河村さんにあわてて電話をしたことも。しかし高山さんから催促の電話がかかってくるので、試験の手を止めるわけにもいかず。他の研究員に頼んで優先的に進めさせてもらったこともあります。
高山
持続可能な社会へ貢献することが、現在当社の方針の一つです。そのため、一日でも早く上市したいという気持ちが強く、急がせたこともあったと思います。一応、申し訳なさそうにお願いしていたつもりなのですが・・・。
高山
最初にバイオマス度が10%と20%の粘着剤を立ち上げ、続いて表面基材にバイオマス素材を利用した粘着ラベル素材を上市。バイオマス素材に置き換えられたものから順番にバイオマスマークを取得し、市場に提供しているのが今の状況です。
米山
バイオマス原料を混ぜて微調整で済む製品もあれば、すべての成分を一から設計し直さなくてはいけない製品もあり難易度はそれぞれ違います。そうすると難易度が高いものばかりが残ることになるので、ここからがさらに大変そうだなと感じています。
河村
責任が大きく、大変なプロジェクトではありますが、自分が頑張ることで二酸化炭素の排出量が減ると思うとやる気が出ますね。最近は買い物でもバイオマスマークがついた商品をあえて選ぶようになりました。私たちのラベルが誰かの意識を変えるきっかけになれたらうれしいですね。
高山
バイオマス原料の利活用プロジェクトは、まだまだ取り組みの途中。今は既存製品をバイオマス原料に置き換えることが中心ですが、今後はバイオマス原料ならではの性質を活かした、まったく新しい個性的な製品を提供することも考えています。
河村
今私が考えているのは、表面基材と粘着剤にどちらもバイオマス素材を使用した新しいラベル素材の構成や、バイオマス度を従来より高めた製品設計を検討しています。
米山
持続可能な社会の実現に向けて、バイオマスラベル素材の開発に終わりはないですね。引き続き、このプロジェクトの研究開発をデータ測定の面からサポートできたらと考えています。
米山
2021年に政府が「2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減」とする新たな目標を発表しました。このようなニュースを耳にするたび、私たちもその役目を担っているのだと実感します。
河村
ただLivastaのバイオマスシリーズのすごいところは、バイオマス度が高いのはもちろんですが、印刷適性や耐久性など従来のラベル素材とほぼ同等の性能を維持できるところだと思います。
高山
そうそう。「性能が変わらないなら環境にやさしいものを」とバイオマス素材を指定してくださるお客様も増えてきています。ラベルは小さな存在ではありますが、さまざまな業界とつながっていますから、このバイオマス素材から生まれたラベルの提案を通じて、環境保全に対する意識を、多くの企業や消費者の方々と共有していけたらいいなと思います。
印刷用粘着紙と印刷用粘着フィルム、可変情報印字用ラベル素材のラインアップをシリーズごとにご紹介しています。各製品の基材色や、粘着剤のタイプなどをご確認いただけます。